(Windows)Qtの開発環境を構築(Qtのインストール)
GUIアプリを作成するためにWindowsにQtをインストールします。
Qtはプラットフォームに依存しないGUIアプリケーションを作成するためのFrameworkです。
そのため、対象のOSが代わってもビルドしなおすことで違うプラットフォームに対応したアプリケーションを作成することが可能です。
今回はGUIアプリケーションを作成するための環境のセットアップとしてWindowsのPCにQtをインストールします。
ビルドできない、
デバッグできない、
という問題や、
デバッガが無いという場合には、
目次の「インストール準備」と「インストールの確認」の項目を参考に設定を修正するとコンパイルやデバッグが可能になると思うので参考にして下さい。
目次
・Qtについて
Qt(キュート)はアプリケーションを作成するためのFrameworkです。
Qtには有料版と無料版があり、無料版はLGPLのライセンスによる使用制限があります。ライセンス形態はQtのバージョンなどによって違うこともあるようなので使用するバージョンに合わせて調べてください。
また、ライセンス以外の違いとして有料版のQtには、3Dグラフ、VirtualKeybordなどを作成するライブラリがあったり、QMLで記述したアプリケーションの解析が可能なアナライザー機能が使用可能だったりと違いがあります。
Qtを使用したアプリの作成は、C++とQMLというQt用の独自の言語を用いた方法の2種類があります。開発環境としてQtCreatorというものがあり、QtCreatorを使用すると画面作成用のデザイナーとコードエディタが統合されており、画面作成から処理のコード作成までをまとめて作成可能です。
プラットフォームに依存しないアプリケーションの作成が可能で対象のプラットフォーム向けに簡単にビルド可能になっています。
詳しくはQtのWebページを参照してください。
下記の日本Qtユーザ会のページなども参考にすると良いかもしれません。
・Qtの入手
下記のURLからQtをダウンロードします。
ダウンロードはWindows、Linux、MacOS向けとありますので自分の環境に合わせてダウンロードします。
今回はWindows7の64bitマシンにインストールするので、Windows7の64bit版のオフラインインストーラかオンラインインストーラをダウンロードします。
下記リンクからはオープンソースのQtがダウンロードできます。
Qt - Download Open Source Step 3
今回はWindows HostのQt 5.6.0 for Windows 64-bit (VS 2015, 836 MB)。
VS2013版とVS2015版がありますが、これはパッケージに含まれるバイナリのQtをコンパイルしたコンパイラのバージョンです。
・インストール準備
ここで下記のコンパイラとデバッガを用意しておくと、
Qtでコンパイルできない、デバッガが使用できないという問題が起きないと思います。
Qtアプリを作成するためのコンパイラとして事前にVisual Studio 2015 Communityをインストールしておきます。
今回は個人利用の範囲での利用を考えているのでCommunityをインストールしました。
C++のコンパイラが必要になるのでC++の開発環境を含めてインストールします。
無料開発ツール - Visual Studio Community 2015
Visual Studio 2015をインストールするのと同時にデバッグ用のツールもインストールしておきます。
Windows Driver Kit (WDK) と WinDbg のダウンロード - Windows 10 ハードウェア デベロッパー センター
上記URLのデバッグツールの入手のリンクからDebugging Tools for Windowsをインストールします
これをインストールしておくと後述するQtのキットに設定することができ、QtCreatorでデバッグを行うことができます。
・Qtのインストール
ダウンロードしたQtのインストーラを実行します。
次へを押すとアカウントを持っている場合はログインor新規アカウント作成の案内が出ます。
今回はログインもアカウント作成もしないので「Skip」をクリックして
インストールを進めます。
次へを押します。
Qtのインストール先を指定して次へを押します。
ファイルをQtCreatorに関連付けるのが嫌な場合はチェックを外しておきましょう。
インストールしたいコンポーネントを選択します。
今回はデフォルトで選択された項目にソースコードの「Qt Souce Package」「LGPLv3 Souce Packages」を追加してQt Scriptを除外してインストールします。
これらのライセンスについては、必要に応じて調べて下さい。
ライセンス条項に同意できる場合にはライセンスに同意するを選択して次へをクリックします。
次へをクリックします。
インストールを押してインストールを開始します。
完了をクリックしてインストール終了です。
・インストールの確認(プロジェクトの作成と実行)
インストールできたことを確認するために簡単なプログラムを実行します。
起動すると上記の画面が表示されます。
QtCreatorを起動します。起動するとサンプルプログラムの一覧が表示されます。
サンプルプログラムが表示されていない場合は、左寄りにあるメニューのサンプルをクリックします。
サンプルをクリックするとプロジェクトの設定の選択画面が開きます。
ここでコンパイラやQtのバージョンをプロジェクトに設定します。この情報をキットといいます。
デフォルトでは上記のようになっています。このままプロジェクトの設定をクリックします。今回は「xquery」というサンプルを選択しているので、xqueryというタブ表示になっています。
これでサンプルプログラムを開きました。
あとは左下にある三角のボタンを押すとビルドして実行してくれます。
ビルドに失敗した場合は、エラーの内容にもよりますが、キットの設定を見直します。
上記の「ツール」⇒「オプション」をクリックします。
左のメニューで「ビルドと実行」を選択します。
今回はコンパイラが正しく設定されていなかったため、サンプルのコンパイルができませんでした。
そのため、コンパイラを正しく設定してもう一度実行することで実行できます。
環境に問題がある場合はまず、この「ビルドと実行」を見直します。
通常はコンパイラとデバッガを先にインストールしておくとQtのインストール時に自動的に設定してくれるので上記のような問題は起きないと思います。もし、起きた場合には、上記の項目の準備で説明しているコンパイラとデバッガをインストールして手動で設定します。
以上でQtのインストールとサンプルの実行方法の説明を終わります。
・おまけ
Qtには様々な機能を提供してくれるクラスが用意されています。
基本的にはヘルプを見れば分かりますが、本当にたくさんあり、英語での説明になるため、目的のクラスにたどり着くのが難しいです。そのため、以下のような書籍を一読しておくとプログラミングの助けになると思います。
Qtはイベント駆動型のプログラムになっており、イベントに対して実行する処理とを結びつけるのにシグナルスロットという機能を提供しています。
このような機能の利用方法や、その他、Qtを利用したプログラムの作成の手助けになる書籍を紹介します。
Qtプログラミング入門―使いやすいフレームワークを基礎から解説 (I・O BOOKS)
Qtのシグナルスロットの説明から簡単なプログラムを作成するために必要な基礎知識が書かれています。サンプルなどのボリュームは下記の書籍に比べると少ないですが、その分すぐに読めるので一読してからプログラムの作成に入るとスムーズに入れるのではないかと思います。
上記の二冊はどちらもQt4の解説で今回インストールしたQt5よりも古いですが、現在Qt5の日本語の書籍は余り無いということ、Qt4向けですが、そのままQt5のプログラミングにも参考になるということでQtでプログラミングする上で持っていて損は無い書籍です。
入門の方で描画方法やイベントの取り扱い方法など、知っておくと便利なことがサンプル付きで書かれているので入門の方があれば十分という方も多いと思います。実践の方は音楽の再生など、実践向きの無いようになっていますので、目次を見て自分の実現したい内容と合っているか確認した上で参考になりそうなら購入をお勧めします。
上記の3冊はC++用です。
Qt QuickではじめるクロスプラットフォームUIプログラミング
QMLでプログラミングをする場合にはこの本を参考にすると良いです。先に上げた3冊 はC++でのプログラミング用なので、QMLでプログラミングを行う場合にはそのまま参考にはなりません。こちらの書籍はQMLでサンプルも記述されていたり、QMLとC++を両方利用する方法に触れていたりするのでQMLでプログラミングする場合の参考になります。